「朱蒙チュモン」歴史とフィクションが織りなす大河ドラマ

こんにちは、皆さん!「チュモン」は、古代朝鮮の英雄として知られる朱蒙の壮大な物語を描いた大河ドラマです。スリリングに描かれた謎多き伝説の人物「チュモン」、史実とフィクションが絶妙に絡み合い、物語の深みを増しています。

本作品には人間の喜怒哀楽が全て詰まっており、視聴者を魅了する要素が満載です。俳優陣の情熱溢れる演技も素晴らしく、物語に命を吹き込んでいます。

この記事では「チュモン」の見どころや感じどころ、古代朝鮮に息づく伝説の世界に思いを馳せながらドラマの魅力に迫ります。

目次

「チュモン」予備情報

朱蒙(チュモン)は、2006~2007年にかけて韓国MBCで放送されたテレビドラマで、全81話の時代劇です。
高句麗を建国した初代の王とされる朱蒙(東明聖王)を主人公とした古代朝鮮のファンタジー史劇です。

高い人気を誇る「ホジュン」「チャングムの誓い」「パリの恋人」に並び、平均視聴率40%越え、最高視聴率50%越えを記録し、韓国で数々の賞を受賞した国民的ヒット作品となりました。

【スタッフ】

監督:キム・グノン
演出:イ・ジュファン、キム・グノン
脚本:チェ・ワンギュ チョン・ヒョンス
原作:ソン・ホクチュ
音楽:キム・ヨンソク

【キャスト】

チュモン役:ソン・イルグク
主人公。古朝鮮の英雄ヘモスと中国のハベク族の王女ユファの子。後に高句麗を建国し初代大王となる/主な出演作品:海神・人生画報・ロビィスト

ソソノ 役:ハン・ヘジン
商団を率いるケル族の君長ヨン・タバルの娘。チュモンを慕う才媛/主な出演作品:がんばれクムスン・テロワール・あなたは星

クムワ王役:チョン・グァンリョル
扶余の王。ユファを側室として迎え、チュモンを自分の子として育てる/主な出演作品:ホジュン・オクニョ・王と私

ユファ 役:オ・ヨンス
中国のハベク族の王女。ヘモスとの仲にチュモンを身籠り、ヘモス亡き後はチュモンを育てるためクムワ王の側室となる/主な出演作品:二度目のプロポーズ・階伯・止まらぬ愛

ヘモス 役:ホ・ジュノ
タムル軍を率いる英雄でチュモンの実父。20年にわたり牢獄に幽閉されるが脱出しチュモンと親子の再会を果たす/主な出演作品:ミッシング・オールイン・仮面の王イソン

王子テソ役:キム・スンス
扶余国王クムワの第一王子。クムワに寵愛されるユファやチュモンに敵対する/主な出演作品:ホジュン・雲が描いた月明り・あなたは星

クムワ王妃役:キョン・ミリ
クムワの正室。テソとヨンポの母/主な出演作品:チャングムの誓い・張禧嬪

★YouTube「朱蒙チュモン」Pickup

「チュモン」ざっくりあらすじ

紀元前108年、朝鮮半島北部を領有していた古朝鮮国は隣国の漢に滅ぼされ、流民は漢の圧制に苦しんでいました。
漢の抵抗勢力タムル軍を率いるヘモス将軍は、漢軍と戦い続け流民たちの信奉を集めていました。

そしてまた扶余国の皇太子クムワもまたヘモス将軍と志を同じくしていたのですが、扶余国の王は漢の圧力に屈し、計略を用いタムル軍を壊滅させてしまいます。
この戦でヘモス将軍は重傷を負いますが、ハベク族長の王女ユファの看病で回復、二人は愛し合うようになります。

しかし、ついにヘモスは漢に捕らえられ磔にされてしまいます。が、この時ユファには新しい命が宿っていたのです。ユファを密かに慕っていたクムワは彼女を側室に迎え、生まれた子を扶余の王子として育てることを決意します。

20年が経ち、王子チュモンは意気地なしの軟弱な者に育ち、皆から見下されていました。しかし、クムワ王には愛されており、正室を母とする二人の王子たちはこれを妬み、事毎に虐げ排除しようと画策します。

チュモンは、運命を共にする仲間たちや大商団の長の娘ソソノなど多くの出会いと、試練・鍛錬を重ねるうちに、眠っていた血筋の本領が発揮され強靭な武力・精神力を身につけてゆきます。

やがて自らの出自を知り、本当の父親の真実を知ったことで、扶余の宮殿を去り、漢に対抗するためタムル軍を再生すべく旅立ちます。
山間に砦を築き、漢との壮絶な戦を勝ち抜き、またソソノとの婚姻で、ついに周辺部族をまとめ、ついには高句麗を建国するに至るのです。

物語は新たな展開を迎えもう少し続きます・・

★古代扶余では弓術の得意な者を朱蒙と言い、それがそのまま英雄チュモンの名前の由来になったのですね。

「チュモン」見どころ・感じどころ

「チュモン」は長編大河ドラマ、総制作費約50億円、特設された巨大セットの敷地は4万5千坪という広大なスケールで制作されました。TVドラマでは珍しい“古代朝鮮”を舞台として、高句麗建国の英雄、伝説の人物チュモンのサクセスストーリーが描かれました。

「チュモン」の人気は主人公の人間的魅力、そしてサクセスストーリーにあると言えます。当初は気弱で情けない男が大化けし、高句麗という大国を建国する英雄へと成長する壮大・痛快な物語です。

チュモンの生涯を描く長編なので、周囲には実に様々な人々が登場してきます。その一人一人にドラマがあり、それぞれが丁寧に描き出され、物語に重みと厚み、そして彩が加えられているようです。

友を裏切り自責の念にかられる王、王の愛を得られぬ正室、父王の愛を奪った母子に嫉妬と憎悪の念を抱く王子たち、そしてロマンス、友情、情熱、陰謀、様々な人間の感情が絡み合い、先の読めない展開にぐいぐい引き込まれ嵌ってしまうのです。

見どころの一つは充実したキャスティングです。主演は本作「チュモン」を演じたことでブレイクし国民的スターとなったソン・イルグクさん。劇中ロマンスの相手もまた人気スターのハン・ヘジンさん。聡明で美しく男勝りのキャラクターで、物語に光彩を放っています。
二人の周りでは、チュモンの実父ヘモスを演じたホ・ジュノさん、扶余のクムワ王を演じたチョン・グァンリョルさん、母親ユファ役のオ・ヨンスさん、意地悪役のキョン・ミリさんとベテラン俳優さんたちの名演が物語に厚み深みをもたらしています。
さらには、ヨン・タバル商団の君長役キム・ビョンギさんやペ・スビンさん、鉄鋼職人役のイ・ゲインさんなど、脇役陣の活躍も見逃せません。

朝鮮半島の古代の歴史は日本ではあまり知られることはありませんでした。韓ドラが普及し人気を博したことから、朝鮮半島の歴史に興味を持つファンもグンと増えたことでしょう。

ドラマ「チュモン」は「三国史記」や「百済本紀」などの歴史資料や建国神話伝承を元に、推測と空想を膨らまし、壮大な歴史エンターテイメントドラマとして創作されたものです。

本作は高句麗建国の祖「東明王=朱蒙」の生涯を描いた歴史ドラマではありますが、多くの部分は虚構で史実とは異なっているとされます。

高句麗の建国神話によると、朱蒙は扶余王の養子として育てられたが、武勇に優れていたため、後継者問題を案じた重臣や王の実子に命を狙われ、扶余国を脱出することになった。肥沃な卒本(チョルボン)の地で味方を得て高句麗を興した、とされますが、他にも諸説あり、どれを事実とするのかは難しいようです。

朱蒙という名前は史書に実在しているのですが、紀元前37年に高句麗を建国したという記録以外の史料はほとんどなく、実際にどんな人物であったのかは全く不明です。

とはいえ、歴史上の事実とフィクションが見事に織り交ぜられた物語「チュモン」は、古代の謎に迫る独特の魅力に満ち、多くの視聴者を魅了し続けています。

ほんの少しの資料から推測し空想し、古代ロマンあふれる壮大な物語を描き出した人の力量には脱帽、脚本や脚色の素晴らしさに感動します。

「チュモン」伝説と史実・壮大な歴史ロマン

高句麗建国前後の古代朝鮮の歴史を、歴史書「三国史書」「百済本紀」そして神話伝承も含めて整理してみました。ドラマ「チュモン」と重ねて、どこがどのように脚色されたのか比較してみるのもおもしろいです。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

青銅器文化が発展した紀元前1000年頃、朝鮮半島は周辺の部族を統合した檀君が治めていました。この時代は古朝鮮と呼ばれます。
しかし、紀元前108年、青銅器に代わるより強い鉄器を扱う中国の大国・漢により滅ぼされてしまいます。

この後、古朝鮮の流れをくむ者たちは国を追われ多くが流民となりますが、反骨の者たちは流民を助け、漢へ反撃すべく何度も戦いが繰り返されます。「チュモン」に登場するヘモス将軍はこうした流民のリーダーだったのです。

神話伝説では、チュモンは天意により水神ハベクの娘・ユファの産んだ卵から産まれたとされます。この辺の真実や、その後の経緯は不明ですが、ともあれチュモンの母はユファであり、扶余王クムワの養子として育てられました。

幼い頃より人並み優れた知性を持ち、特に弓矢は百発百中だったとあります。夫余の家臣や実子である王子は、将来必ず異心を抱くのではとチュモンの力量を恐れ、チュモンを抹殺しようと画策します。

陰謀を察知したユファは急遽逃亡するよう告げ、チュモンは友であるオイ・マレ・センピョと共に扶余を逃れてゆくのでした。この時チュモンは既に結婚しており、妻イエ・ソヤと、長子ユリ(類利)の二人を置いて出奔しています。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

チュモンたちは東南へ逃走し、卒本(チョルボン)へ辿り着きます。そこで現地の王と親しくなり、チュモンの非凡な才能を見抜いた王は二番目の娘を娶らせました。

王には息子がいなかったため、この婚姻によりチュモンは王位を継承し、その後周辺諸国を次々に統合し、ついに紀元前37年、高句麗を建国するに至るのです。

チュモンと皇后・召西奴との間には、ピル(沸流)とオンジヨ(温祚)という二人の王子が誕生しました。
しかしその後、長子ユリがその母と共に夫余から逃れてきます。これを喜んだチュモンはユリを後継者にしたのです。

内乱を恐れたピルとオンジヨは、高句麗を去る決断をします。国を出て南へ向かい、馬韓の地に行き着き、ここに城を築き百済を建国し、オンジヨが初代国王となります。

紀元前19年の九月、チュモンは40歳で亡くなったと記録されています。龍山に葬られ、諡号を東明聖王とされました。

高句麗に続き、各地の小国を統合した百済、そして新羅による三国時代を迎えます。この時代は、700年もの間続き、古代日本にも大きな影響が与えられました。高句麗は第19代の広開土王による領土拡大で、遼東半島、満州までも領有し、中国に影響を与えましたが、後に、唐と新羅の連合軍によって668年に滅亡してしまいます。

「チュモン」古代朝鮮のミステリー

高句麗の建国神話では始祖が卵から産まれたと、こんな風に伝えられています。
「扶餘の水神ハベクの娘・ユファは天から降りた不思議な光によって身籠もり、大きな卵を産みます。卵から男の子が産まれ、やがて武芸に優れた凛々しい若者に成長し、後に高句麗を建国した初代大王・朱蒙(東明王)となった」。

高句麗の第19代の王である広開土王の業績を称え、414年に建てられた「好太王碑=広開土王碑」には、この神話伝説を裏付ける一文が見られます。「始祖の鄒牟王を顧みれば 聖なる始祖王は北夫余より天帝の子 母を河伯の女郎として卵から生まれた」と。

卵から生まれたという誕生秘話は、建国の始祖の神がかり的な天運を人々に知らしめる方便として用いられたもので、扶余、新羅、伽耶でも同じような伝説が伝えられています。

古朝鮮の時代から続く扶余は、強大になった新興高句麗によって滅ぼされてしまい、扶余の建国神話は高句麗の建国神話にとってかわられたと考えられます。

カラスは真っ黒で一般的に不吉な存在とされていますが、実は鳥類の中でも特に頭が良く、知恵と神秘性を持つ鳥として知られています。
予知能力を持っているともされ、古代の人々はその力を信仰の対象として崇め、世界中の神話や伝承で、カラスは神の使者であり人間に示唆を与える鳥として描かれます。

太陽の中に住むという三足カラスの由来は、古代中国の文献や高句麗の史書にも記されており、創世神祇における神秘的な存在として人々に敬われてきました。

神話によれば、三足カラスは天界から降りてきて高句麗建国の始祖を導いたとされています。
故に三足カラスは、高句麗の神聖性を表わすシンボルであり、国の繁栄を願う象徴として掲げられました。

日本神話にも登場する八咫烏(やたがらす)は、朝鮮半島を経て日本に伝わってきたのでしょう。古事記や日本書紀には、神武天皇が東征の際に八咫烏に導かれたという記述があります。

★三足カラスは幸運のシンボルとして、日本代表サッカーチームのエンブレムにもなっていますね。

「チュモン」まとめ

はい、いやー、とにかく素晴らしいドラマでした。オープニングで流れる曲のイントロ・インパクトが強く、それだけでストーリーに引き込まれてしまいます。物語の展開もテンポよく、しかも内容は濃厚で、充実した俳優陣の演技も相まって、かなりクオリティの高い作品と言えます。

確かに、本作品はソン・イルグクさんをはじめ、出演した複数の俳優さんたちが主要な賞を軒並み受賞するという快挙!ビッグドラマになったのですね。

それにしても、古代朝鮮については資料が少なく謎に包まれた部分が多いようです。それだけに「チュモン」「太王四神記」「鉄の王キム・スロ」など古代の物語にはワクワクします。
今後とも映画・ドラマ制作者の方々には多いに期待したいと思います!

★それでは、またお会いしましょう。Good Luck!

本ブログはSWELLを使用しています
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この記事を書いた人

居所地:日本の中央山岳地域で田舎暮らし
映画・TVドラマ大好き人間
古代ロマン・スピリチュアル小説ファン
Pen name:東岳院展大
Blog nickname:福徳星人

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