「黄泉がえり」ミステリアスロマンの世界

黄泉がえりタイトル

こんにちは、皆さん!「黄泉がえり」その響きだけで霊魂を彷彿とさせる神秘の世界が広がってくるようです。「黄泉がえり」は、超常現象が交差するミステリアスロマンの物語。この世とあの世を巧みに組み合わせ、観る者の心を引き込んでゆきます。

今回は「黄泉がえり」にみる霊的なアプローチから紡がれるミステリアスな世界観や心模様に接し、そしてまた古代から伝わる神秘の蘇り、古神道における霊魂思想についても探ってみました。
不思議な魅力に満ちたこの物語を振り返り、心温まる感動とその魅力に触れてみようと思います。

目次

「黄泉がえり」予備情報

「黄泉がえり」は、梶尾真治の同名小説を原作として、2003年に映画化されました。
死んだはずの人が蘇るという不可思議な出来事をラブロマンスも含め叙情的に描いた異色のストーリー、ロングラン大ヒット映画です。
第27回日本アカデミー賞で優秀監督賞・優秀脚本賞・優秀音楽賞他、数々のコンクールでも受賞しています。

【スタッフ】

監督:塩田明彦
脚本:犬童一心 斉藤ひろし 塩田明彦
原作:梶尾真治
音楽:千住明  主題歌「月のしずく」RUI

【キャスト】

草彅 剛 石田ゆり子 哀川 翔 柴咲コウ 田中邦衛 
竹内結子 伊勢谷友介 伊東美咲 山本圭壱 長澤まさみ

★YouTube「黄泉がえり」Pickup

「黄泉がえり」ざっくりあらすじ

九州・阿蘇地方で、死んだ人が「黄泉がえる」という超常現象が発生します。厚生労働省の職員、川田平太は、その謎を探るため、自分の生まれ故郷でもある現地に赴きます。
そこで平太は密かに想いを寄せていた幼馴染の葵と再会します。葵は、事故で亡くなった平太の親友・俊介のフィアンセでした。

町役場の職員である葵は平太に協力し、この不思議な現象の調査を手伝います。

あちこちで黄泉がえりが発生し、元の姿のまま死者が戻ってきたことに家族は喜んでいます。こうした家々の聞き込みなど調査を続けるうちに、平太は黄泉がえりの条件が何なのかに気付きます。

ある山中の森の中に隕石口と思われるクレーターがあり、黄泉がえった死者たちは皆、この周辺に埋葬されていた人たちでした。それともう一つ、黄泉がえってほしいと願う人の想いを受けていることでした。

医学的見地から、黄泉がえった人たちの精密検査も行われました。また一定のエリアを出ると消えてしまうことも分かりました。

そうこうするうちに、平太は葵が交通事故で亡くなっていたことを知り、ハタと気が付いてしまうのでした。葵もまた黄泉がえった人間だったことに・・そしてまた、葵が黄泉がえった理由は、平太が葵に会いたいと願っていたからだということに・・

死者がこの世に存在できる黄泉がえり現象には時間に限りがあり、黄泉がえった人たちには、そろそろ終わりだと分かるようで、その時がくると次々に消えていくのでした。

平太は長年心に秘めていた葵への気持ちを打ち明けます。しかし、他の黄泉がえった人々と同様、黄泉がえりのタイムリミットに達した葵は、あっという間にあの世へ旅立ってしまうのでした・・

「黄泉がえり」見どころ・感じどころ

黄泉がえりイメージ

「黄泉がえり」は、死者の蘇りというミステリアスな物語を通し
大切な人への想いを綴るラブ・ファンタジードラマです。

◆現実の中の非現実・奇想天外な設定

亡くなった人を想い続けている人のもとへ、死者が当時の姿のまま黄泉がえり戻ってくるという奇想天外な発想で話が進んでゆきます。

黄泉がえった人たちも、現実の家族たちも、思いがけない再会を喜んだり訝ったりと、様々な家庭の様々なエピソードが盛り込まれ、極めて現実的な感覚の中で人間ドラマが切なく感動的に描かれます。

主人公の平太と葵による「黄泉がえり」の調査は極めて現実的に進められてゆきますが、やがて真実が解き明かされつつ、非現実的な世界がクロスし、クライマックスへとたどり着きます・・

◆「黄泉がえり」にみるメッセージとは?

「たとえ一分でも愛する人と心を通わせられたら幸せな人生、それを胸に生きて行ける」なんていうようなセリフがありましたが、この考えは・・人によりけりかもしれません。自分的には、一分だけじゃあ、あまりに切なすぎる人生じゃありませんか・・

人の死は、ましてや愛する人の死はとても悲しいものですが、ラストに「これから新しい人生が始まる」と聞こえる言葉には、あの世へ逝く者が残された者へ「しっかり生きて」という前向きな示唆が感じられます。

結局「黄泉がえり」が伝えたいメッセージとは何だったのか?いまいちはっきりしないのですが、「言いたいこと、思っていることがあるなら、生きているうちに伝えておきなさいよ」ということでしょうか・・
超常現象や神秘ロマンに惹かれる自分にはとても興味深いストーリーでした。

◆出演者や音楽の好感度!

SMAPのメンバーだった草彅剛さん。他のメンバー同様、俳優として活躍中ですが、その演技力は本作の中でも高感度評価です。2020年の主演映画「ミッドナイトスワン」では同年の日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞に輝いています。

また、柴咲コウさんのライブシーンがとても印象的でした。
劇中に登場する歌手、柴咲コウさん演じるRUIが歌う「月のしずく」は心にしみてきました。このテーマ曲が本作「黄泉がえり」の世界観を一層引き立て、不思議な物語への感動を誘っているようでもあります。

★「黄泉がえり」は放送禁止状態とか、出演者の不祥事?残念です。

「黄泉がえり」古神道に見る蘇りの秘術

「古事記」や「日本書紀」より以前に著わされた古典「先代旧事本紀」には、古代の治世の在り方や人格神の由来に関する掲載が網羅されており、その中の一節に、現在も伝わる「黄泉がえり」に関する神咒を見出すことができます。

「黄泉がえり」は、死後の世界である「黄泉」から生者の世界に戻ってくることを指す言葉で、日本の伝統や文化において特有の意味合いを持つ表現といえます。
「黄泉がえり」「黄泉の国」などは、日本神話における霊的な世界であり、死者や霊的存在に関する考え方の一つの象徴として、多くの物語や信仰の舞台として描かれてきました。
本作「黄泉がえり」も、タイトルだけで神秘的なイマジネーションが湧いてきますね。死と生、この世とあの世という二つの世界が交差する不可思議な世界が感じられます。

古代神話イザナギ・イザナミの物語で知られる死後の世界、黄泉の国はヨモツクニ、根の国とも呼ばれ、地下または山中にあるとされます。
黄泉の国は神々や鬼が住むとも言われ、暗く陰鬱な所で罪や穢れが集まる場所であり、死者の霊魂はまず冥途で審判を受けた後、ここ黄泉の国に渡り永遠に留まるとされます。
一方、死後の世界でも常世の国(とこよのくに)と呼ばれる処もあり、こちらは海の彼方にあるとされ、神仙が住み、死者の霊魂の安息の地とされています。

現在でも伝承されている神咒として、十種神宝祓詞(とくさのかんだからのはらえことば)は、神霊を祀る際に用いられる祝詞で、神聖な力や神格を崇め唱えられます。この中の「黄泉がえり」に関する冒頭部分を見てみましょう。

高天原に神留坐ます 皇親 神漏岐 神漏美の命以ちて
皇神等の鋳顕し給ふ十種の瑞寶を 饒速日尊に授け給ひ
天津御祖神は言誨へ詔り給はく
汝命この瑞寶を以ちて 豊葦原の中國に天降り坐して
御倉棚に鎮め置きて 蒼生の疾病の事あらば
この十種の瑞寶を以ちて 一二三四五六七八九十と唱へつつ
布瑠へ、由良由良と布瑠へ かく為しては死人も生返らむ

と言誨へ詔り給ひし随に 饒速日尊は天磐船に乗りて
河内國の河上の哮峯に 天降り坐し給ひしを その後
大和國山辺郡布瑠の高庭なる 石上神宮に遷し鎮め斎き奉り・・

簡単に言い換えると、天津御祖神(あまつみおや)が饒速日尊(にぎはやひのみこと)に十種の神宝を授けこう教えました。「この神宝を持って天降り、病の人がいたら、一二三四五六七八九十と唱えながら神宝を揺らしなさい。そうすると、死人も蘇るのだよ」と。

十種神宝祓詞で唱えよと言っている、一二三四五六七八九十(ひとふたみよいつむゆななやここのたり)は、神秘の波動、言霊(ことだま)を宿すとても重要なキーワードなのです。
この詞を冒頭に、清音47音で構成される「ひふみ祝詞」は、鎮魂・厄除・招福、そして死者をも蘇生するという非常に強い言霊パワーを宿す神咒とされています。

では、十種神宝祓詞に示される「黄泉がえり」のための神宝とはどんなものなのでしょうか?

大和の国、石上神宮に祀られたという十種神宝の霊力は極めて強力なもので、国家の存亡を左右するほどの霊力が備わった神器であるとされます。ではどんなものか見ていきましょう。

沖津鏡(おきつかがみ)
遠くを見る聖なる鏡、世の中を広く見渡す、神の世界の象徴。
辺津鏡(へつかがみ)
自己の内面を深く見る聖なる鏡。本質を見分ける、現世の象徴。
八握剣(やつかのつるぎ)
国家の安泰を願い、悪霊を祓うための神剣。武・信念を象徴。
生玉(いくたま)
この玉を通じて神と人がつながりコミュニケーションをとる。
足玉(たるたま)
全ての願いをかなえる玉。人が生きるに足る環境を整えてくれる。
死返玉(まかるかへしのたま)
死者を蘇らせることができる玉。または霊魂の存続を象徴。
道返玉(ちかへしのたま)
精神や肉体の故障、道を踏み外した時、元の道に戻す。悪霊封じ・悪霊退散。
蛇比礼(おろちのひれ)
ヘビや害虫などから身を守る呪力を持つ布。自然災害災厄から命を守る。
蜂比礼(はちのひれ)
天空からの邪霊から身を守る布。精神的・霊的な災厄や障害などを打ち払う。
品々物之比礼(くさぐさのもののひれ)
人がもたらす災厄や悪人の侵攻を防ぎ身を守る。兵器。または浄化作用のある布。

これら十種の神宝を用いて神咒を唱えることにより、神秘のエネルギー、霊験が顕れるということになります。が、これはやはり能力者が実践してこそ効力が発揮されるものと言えるものかもしれません。

「ひふみ祝詞」は47文字の短い神言ですが、言霊を宿すとても強い詞とされます。日常の読唱で開運気運の浄化につながるともされます。

「黄泉がえり」まとめ

はい、死者が蘇るという不可思議な現象の顛末を描いたファンタスティックなラブストーリーでした。

愛する人が亡くなってしまったら、残された者はその現実を受け止め、喪失感・虚無感といったものと向き合いながらて生きてゆかねばなりません。
そんな時「黄泉がえり」現象とやらで、死者が蘇えり元の姿で戻ってきたとしたら? 喜びと同時に、その不可解さや怪しさに戸惑ってしまうことでしょう。

家族や恋人には蘇って欲しいと願いはしますが、やはりそれは夢の中で納めておくべきことなのでしょう。中には蘇りたくない人もいるでしょうし・・

★それでは、またお会いしましょう。Good Luck!

本ブログはSWELLを使用しています
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この記事を書いた人

居所地:日本の中央山岳地域で田舎暮らし
映画・TVドラマ大好き人間
古代ロマン・スピリチュアル小説ファン
Pen name:東岳院展大
Blog nickname:福徳星人

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