こんにちは、皆さん! 中国ドラマ「燕雲台」は、10世紀頃中国の北方を支配した遼国を舞台とする壮大な歴史ドラマであり、愛と権力、そして運命が交錯する物語です。
後に皇后となった蕭燕燕を主人公に、彼女がどのように一族と国を守り抜き、歴史に名を刻む存在となったのかが描かれます。
広大な草原、豪華な衣装、壮麗な宮廷、そして登場人物たちの細やかな心理描写と、その展開に目が離せません。
今回は「燕雲台」の歴史的背景やキャラクターの魅力を探ってみました。歴史好きな方も、感動的な人間ドラマを求める方も、楽しみながら遼の時代に誘われてみましょう!
「燕雲台」予備情報
「燕雲台~The Legend of Empress」は、2020年、中国の歴史エンターテイメントテレビドラマ。宋と遼が対峙する時代、愛と陰謀の渦中で国家統一に携わり、遼の五代皇帝・景宗の皇后として、また六代皇帝・聖宗の母として、この二代の治世を補佐しながら激動の人生を送った伝説の皇后、蕭皇后の生涯を描いた全48話の物語です。
【スタッフ】
監督:チャン・カーチュン(射鵰英雄伝)
脚本:ジャン・ションナン(ミーユエ王朝を照らす月)
【キャスト】
蕭燕燕(しょう・えんえん)/蕭皇后:ティファニー・タン(王女未央-BIOU-)
韓徳譲(かん・とくじょう):ショーン・ドウ(楚喬伝・海上牧雲記)
耶律賢(やりつ・けん)景宗:ジン・チャオ(如懿伝・白華の姫・流光城市)
蕭胡輦(しょう・これん):カーメイン・シェー(瓔珞・君花海棠の紅にあらず)
蕭烏骨里(しょう・うこつり):ルー・シャン(琅琊榜)
「燕雲台」ざっくりあらすじ

10世紀、北方に位置する契丹人の大国・遼は、後晋から割譲された燕雲十六州を境界として南方の宋王朝と対立していました。
一方、国内では太祖の三人の息子たちの血統間で絶え間なく帝位争いが繰り返され、今も第四代皇帝・穆宗の座を狙い水面下で権力闘争が続いていました。
皇帝の座を狙う皇族たちは、誰もが皇后を輩出している蕭家を味方に付けたいと考えており、宰相である蕭思温の三人の娘たち、長女・胡輦(これん)、次女・烏骨里(うこつり)、三女・燕燕(えんえん)との結婚を望んでいました。
活発で勇敢な三女・燕燕は、ある時、駿馬を手に入れようと奮闘中、馬の持ち主の韓徳譲に出会います。韓徳譲は漢民族ながら遼の臣下で、国の未来に大志を抱く2人はやがて惹かれ合い結婚の約束をすることに。
長女・胡輦は、皇帝の弟・耶律罨撒葛(太平王)に、次女・烏骨里は太祖の孫・耶律喜隠に嫁ぐことになり、やがて蕭家の三姉妹は骨肉の権力闘争に巻き込まれ運命を分かつことになってしまいます。
◆ ◆ ◆
暴君だった第4代皇帝・穆宗がついに殺害され、いち早く駆け付けた耶律賢が、親友の韓徳譲や蕭思温らによって新皇帝として推戴されますが、出遅れた太平王は兵を率いて駆けつけ、これを襲撃するも退敗し、反逆者として遼を立ち去る他ありませんでした。
韓徳譲を側近として第5代皇帝に即位した耶律賢でしたが、最高権力を得たことで、以前から見初めていた燕燕を皇后に望んだのです。燕燕と徳譲が恋仲なのを承知の上で、なかば強制的に親友の恋人を奪おうとするのでした。
友人の暴挙に反発した燕燕と徳譲は駆け落ちしますが、捕らえられ罰を受けることに。結局、燕燕は皇帝に嫁ぎ、徳譲は友人も恋人も失い朝廷を去ることになってしまいます。
全てを諦め頑なになっていた燕燕でしたが、やがて、国を守るため力を貸してほしいという耶律賢の説得を受け入れ、夫婦として遼の未来を考えるようになってゆきます。
◆ ◆ ◆
皇帝の座を奪おうと国を離れても反撃の機会を狙う太平王、朝廷では謀略を巡らす喜隠や重臣達とのトラブルが続きます。そんな中、蕭思温が殺害され、皇帝は事件解決のため信頼できる韓徳譲を都に呼び戻します。
韓徳譲は、戸惑いながらも過去は水に流し、国や朝廷のために力を尽くすのでした。
韓徳譲は朝廷の重鎮となり、謀反を起こした喜隠を失脚させ、皇宮に攻め込んできた太平王の軍勢を殲滅し、皇后と共に病弱な皇帝を補佐し政権を確実なものにしてゆきます。
政争に巻き込まれた燕燕の姉たちの死、そして迎えた皇帝の死。悲しむ間もなく、燕燕の息子で12歳となる耶律隆緒を第5代皇帝に即位させ、自らは太后として、韓徳譲と共に治政を担います。
いざこざが続いてきた宋と遼の間では、ついに澶淵の盟が締結され、和解により国の安定が図られました。やがて燕燕は死を迎え、後を追うように韓徳譲も逝き、燕燕の墓の隣に埋葬されます。引き裂かれた恋人たちは死して、やっと結ばれることに・・
「燕雲台」見どころ・感じどころ

◆万里の長城を超えた壮大な遼国の草原
万里の長城を超えた中国大陸の北方に王朝組織を築き繁栄した国「遼」の国土は、地図上で見ても東西に拡がるかなり広大な領土です。果てしなく続く草原、駆け抜ける駿馬、森や川、山脈や星空など自然の美しさが映像から伝わり、その雄大さに癒やされます。
そんな雄大な環境にありながら、部族同士、また血族間の争いも激しかったようですが、北方の寒冷地で家族や仲間が生き抜くためのやむなき死活戦争だったのかもしれません。
契丹人の誇りや、また草原・馬・羊・鳥など自然を尊ぶ気持ちなどもよく理解でき、契丹の人々の立場や目線で世の流れを見ることで、歴史的視野がより深いものに・・
◆運命に弄ばれた三姉妹三様の人間模様
血族争いが絶えない遼王朝で、蕭家の存続を守ろうとする父親の思惑もあり、三姉妹は、皇位継承候補それぞれの王子に嫁いだため、運命の悲劇に巻き込まれてしまいます。
結局、三女燕燕の夫が皇位を継ぎ燕燕が皇后となり、その才媛を生かし治世に貢献することになります。
長女胡輦は妹を大事に思いながらも、長女としてのプライドにおいて葛藤し、次女烏骨里もまた策謀を巡らす夫と妹との板挟みに悩み苦しみます。それぞれが夫の政争であると共に妻たちの戦いでもあり、姉妹を引き裂く切ない人生を余儀なくされるのです。
★本作は2020年を代表するヒット作となり、ヒロイン燕燕を演じたトップ女優ティファニー・タンさんはトップキャラクターに輝いています。
◆政を補佐した漢人、できた人・韓徳譲
ショーン・ドウさん演じる韓徳譲。契丹人の中にあって漢人の韓徳譲は見下される存在でした。おそらく契丹人の重臣からは反感や妬みをかい大変だったろうと考えられます。そうした中でも、皇帝となった耶律賢の友であり、朝廷で重用された漢人ですから、人徳に優れた優秀な人物であったと思われます。
燕燕とは愛し合いながらも結ばれず、しかし、後には同士とも言える信頼関係で結ばれ、共に国を平和に導こうと努力を重ねます。韓徳譲は最後まで燕燕を愛し、支え、節度をもって守り続けました。本当に素晴らしい人格者でした。

★蕭皇后と韓徳譲の関係は、宋の時代の野史「乗軺録」に載っているものらしい。史実かフィクションか、推測しながら観るのが面白い!
「燕雲台」契丹人の国「遼」早分かり


北方の帝国「遼」の興亡
907年に唐が滅びた後、国内は分裂し五代十国時代を経て「宋」が台頭、北方では契丹人を中心に遊牧民族が力をつけ「遼」国を興しました。太祖と呼ばれる耶律阿保機が初代皇帝となり、渤海をも滅ぼし、満州からモンゴル高原まで広がる大帝国を建国し、万里の長城を境に「宋」と勢力を争うまでになりました。
そうした中、文化的には契丹人と漢民族の接触・交流が進み、遊牧民族の生業であった畜産・狩猟・漁猟に加え、農業や都市の建設へと発展していきました。
しかし、「遼」は服属させていた他民族に対しての圧力や収奪による恨みをかい、ついに女真族が反旗を翻します。「遼」はこの鎮圧戦に大敗し滅亡、1115年、女真族が金王朝を打ち立てます。金は、やがて「宋」を滅ぼし大帝国に成長するするも、次代に勃興するモンゴル帝国(元)に滅ぼされてしまいます。
燕雲十六州とは
劇中に登場する「燕雲十六州」とは、10世紀の五代十国時代、「後唐」を滅ぼした「後晋」に協力した見返りとして「遼」が獲得した領土であり、万里の長城より南に位置する要衝の地でした。
「燕雲十六州」の「燕」は現在の北京市を中心とする11州、「雲」は現在の大同市を中心とする5州であり、農耕地帯と都市の形態を併せ持つ豊かな地域でした。
この地は「遼」と「宋」双方にとって、軍事や交易の要衝の地であり、両国はこの地を巡って長い間争い続けたのです。
「遼」の民族性・暮らし
北方の遊牧民族は騎馬民族として、馬上からの射弓や相撲で力を競ったり、歌やダンスを好み暮らしを楽しんでいました。女性たちも武術を磨き戦場で活躍したり、結婚相手を自分で選んだりと自由な気風があったようです。
遊牧民族は、気候や季節の変化に応じて移動しながら生活するため、移動や設置が簡易的に行えるゲル(中国ではパオ)と呼ばれる伝統的な天幕式居住空間に暮らしていました。ゲルは円形構造で木製のフレームと羊毛フェルトで覆われ、強風や寒さにも耐えられる仕様になっていす。
草原での移動は家畜を伴い長距離に渡ることもあります。家畜を殖やし肉や乳を採り、羊の毛から衣服などの布地を作り、家畜は彼らにとって生計に欠かせないものとなっていました。皇帝もまた季節と共に宿営地を移動し、ゲルの中で政を行っていました。漢民族の影響を受け首都や宮殿を建設した後も、この伝統は続けられていました。
余談ですが「燕雲台」について
「燕雲台」とは、燕雲十六州にあった見晴らし台とか見張り台なのでしょうか?その実態は?その存在は史実? ちょっと疑問に思いAIに訊ねてみましたら、こんな回答が返ってきました。
「燕雲台」の「台」という言葉についてですが、これは必ずしも物理的な見晴らし台や見張り台を指しているわけではないようです。具体的に「燕雲台」が史実として存在したかどうかについては、明確な記録は見つかりませんでした。
「燕雲台」というタイトルは、遼が支配した「燕雲十六州」と深く関連しており、遼の文化や歴史を象徴する抽象的な表現である可能性が高いです。
「燕雲台」まとめ
はい、あまり馴染みのない「遼」という国の、これも初めて知る蕭燕燕という皇后の一代記でした。血族間の政争、三姉妹のラブロマンスと悲劇、権謀術数や、スペクタクルな戦闘もあり、内容は盛りだくさん!
中原に興亡する漢民族王朝を中心に描かれる物語は多くありますが、北方遊牧民族の目線で描かれるドラマは少なく、その風習やファッションも興味深く新鮮味があるストーリーでした。
運命に翻弄されながらも強く生き抜いた主人公を通して、愛とは、家族とは、そして大切なものを守ることや、大志や信念を貫こうとする努力は、現代に生きる私たちにも訴えかけるものがありますね。



それでは、またお会いしましょう。Good Luck!