こんにちは、皆さん! まずは、10月17日に亡くなられた西田敏行さんのご冥福をお祈り申し上げます。
西田敏行さんは多くの名作で視聴者に強烈な印象を残し、その独自な演技力や個性は今なお多くの人々に愛され続けています。
西田さんが出演した映画・ドラマは作数えきれないほどあり、私も結構な本数を見てきましたが、中でも彼の個性が光る作品として私の印象に残っているドラマの一つが、大分以前の出演作ですが、NHK大河ドラマ「おんな太閤記」です。
今回は、西田敏行さんへの追悼の意を込め、「おんな太閤記」をとりあげ、物語の魅力を探求するとともに、生前の西田敏行さんの活き活きとした姿を振り返ってみたいと思います。
「おんな太閤記」予備情報
「おんな太閤記」は、NHKの大河ドラマ第19作で、1981年に放映れた全50話の物語です。ヒロインねねと藤吉郎の出会いから始まり、夫婦が心を合わせ戦国という苦難の時代を駆け抜け、夫が天下人豊臣秀吉となり、更に豊臣氏滅亡の大坂の陣まで、波乱に満ちたストーリーが、妻ねねの視点で描かれます。
【スタッフ】
脚本:橋田壽賀子
演出:北嶋隆 他
オープニング曲:坂田晃一
【キャスト】
秀吉の妻 ねね:佐久間良子
豊臣秀吉:西田敏行
秀吉の母 なか:赤木春恵
秀吉の弟 秀長:中村雅俊
秀長の妻 しの:田中好子
秀吉の姉 とも:長山藍子
秀吉の妹 きい/あさひ:泉ピン子
きいの夫 副田甚兵衛:せんだみつお
茶々/淀殿:池上季実子
織田信長:藤岡弘
お市の方:夏目雅子
前田利家:滝田栄
徳川家康:フランキー堺
蜂須賀小六:前田吟
東てる美 大和田獏 大和田伸也 神山繁 小松方正 近藤洋介 尾藤イサオ 坂上忍 浅茅陽子 長塚京三 音無美紀子 宅麻伸 他
「おんな太閤記」ざっくりあらすじ
永禄3年(1560年)戦国時代、織田信長に仕えていた木下藤吉郎は、桶狭間の戦いで負傷した上役を見舞いにいき、そこで娘のねねと親しくなり、やがて結婚することになります。
主君織田信長は天下取りに驀進、その勢いに乗じ、懸命に働く藤吉郎、もって生まれた知恵を生かしどんどん出世を重ねていきます。
出世につれて周囲の環境も目まぐるしく変わる中、ねねは必死に藤吉郎を支えていきます。
やがて藤吉郎は「羽柴秀吉」と名を改め、ついに一国一城の主となったのです。
秀吉の出世に伴い、親族たちの身分も引き上げられます。特に秀吉の弟小一郎(後の豊臣秀長)は秀吉の側近として、終生に渡り良き相談相手となります。
しかし秀吉の母なかは、命をかける武士の身分を良しとせず、今までどおりの百姓の暮らしにこだわっていました。が、歳もとり結局は秀吉やねねたちの城に移り暮らすようになります。
◆ ◆ ◆
ねねは子宝に恵まれず、秀吉は次々と側室を持ち、ねねの心は傷つきます。秀吉はそんなねねを気遣い、友人前田利家の娘豪姫を養女に貰い受け育てることに。
天正10年(1582年6月)明智光秀の謀反により信長は本能寺の変で亡くなります。中国攻めの戦地にいた秀吉は急遽軍を戻して光秀を滅ぼし、信長の後継者として名乗りを上げ、実権を掌握することに成功します。
秀吉は大坂に居城を構え着々と天下人への歩みを進めてゆきます。一方ねねは、権力者へと変貌する夫に不安を覚えながらも、将来のために一族の子弟たちを集め懸命に育て、また周囲の女性たちを守るべく気を配るのでした。
◆ ◆ ◆
秀吉の天下統一後、側室となっていた信長の姪・淀殿が男子(後の秀頼)を出産します。秀吉はこの子を溺愛しますが、しかし、間もなく病のため亡くなってしまいます。
これにより豊臣恩顧の石田三成と徳川家康とが権力争いで対立し、ついに関ケ原の戦いで家康が天下を手中に収めることに。
その後も家康は淀殿と秀頼が守る豊臣家を圧迫し、ついに大阪城に攻め寄せます。ねねは出家し京都の高台寺に隠居していましたが、豊臣の血筋を生かすべく、助命と大坂城明け渡しの説得をしますが聞き入れられず、淀殿は大坂城と共に滅亡の道を選択するのでした。
慶長20年(1615年)ついに大坂城は炎上し陥落・・ねねと秀吉の歩んだ人生もまたかくのごとし・・露と落ち 露と消えにしわが身かな 難波のことも夢のまた夢・・
「おんな太閤記」見どころ・感じどころ
日本人にはお馴染みの戦国サクセスストーリー「太閤記」は、俳優さんが変わりながら何度もリメイクされてきた歴史物語ですね。
今回とりあげた「おんな太閤記」は、豊臣秀吉の妻、ねねの目を通じて、女性の視点から戦国を生きる人々の心模様が描かれ、他の太閤記とはまた一味異なるものとなっています。
橋田壽賀子さんのきめ細かな脚本によるものでしょうか、平均視聴率31.8%と、他の大河ドラマの中でも高視聴率の人気作だったようです。
みどころは、男でも生きずらい戦国時代を戦々恐々としながらも、夫と共に、夫を支え続けた妻ねねの聡明さでしょうか。
劇中、秀吉は偉くなった後も糟糠の妻への愛と親しみをこめて、ねねを“おかか”と呼びます。ねねとしては、側室を何人も娶る夫に、いい顔はしたくないはずですが、一夫多妻は当たり前という時代、“おかか、おかか”と言う秀吉の甘え上手に黙って応えるしかなかったのですね。
ねねは自らの立場をよくわきまえ、そうした女性たちをも身内として守る優しい心の持主だったのでしょう。
天下を統一した後も秀吉の野望は尽きず、海を渡り朝鮮から明を征服しようと兵を送り出します。戦の無い世を願い天下統一を成し遂げたはずなのに、これにはねねも困り果てたに違いありません。
秀吉の死によって出兵計画は無くなりましたが、天下の継承争いが始まります。再び大乱の世を招いてはならないと、ねねは豊臣家の存続を願いつつも、天下の民を安んじる力を持つ政治勢力徳川家を優先するのでした。
これは、ねねの懐の深さなのでしょうか、しかし、心の片隅にこんな思いもあったのではないでしょうか・・豊臣の天下は夫秀吉と私ねねが共に築いたもの、秀吉亡き後、他の女性(淀殿)の手に渡るくらいなら滅びの道を辿ってもやむをえぬと・・
名優・西田敏行さんを偲んで
2024年10月17日、私たちに笑いと幸せを届けてくれた名優、西田敏行さんが亡くなりました。享年76歳とのこと。
彼の活躍は以前から知っていましたが、NHKの大河ドラマ「おんな太閤記」を観てから本当のファンになりました。
「釣りバカ日誌」シリーズの新作も毎回楽しみで、私の人生の合間に笑いと幸せを届けてくれました。大河ドラマで見せるシリアスな演技とは打って変わり、ユーモラスで人懐っこいキャラクターハマちゃんは、西田さんの魅力が存分に発揮されるものでした。
西田敏行さん、あなたは多くの映画やテレビドラマへの出演はもちろん、舞台でも活躍され、その温かみのある独特な演技で個性俳優として多くの人々を魅了してこられました。
更に、歌手や司会者としてバラエティー番組でも活躍されました。「もしもピアノが弾けたなら」は優しい歌声で大好きな曲です。
西田敏行さん、あなたは忙しい仕事のかたわら、東日本大震災で被災した故郷・福島の復興に、積極的に携わってこられました。福島の観光PRやイベントへの参加、風評被害に苦しむ生産者への支援にも心を尽くされました。
親しみやすく誰からも愛される人柄は天性の賜りものなのでしょう。映像でしかお会いしたことはありませんが、分かります。精一杯お仕事をされ、ご家族やご友人にも恵まれ、きっとお幸せな人生を送られたことと思います。
一ファンとして、心よりご冥福をお祈りいたします。
◆西田さんの死を暗示していた椿山課長
西田敏行さん演じる「椿山課長の7日間」は「死」をテーマとしたコメディ映画です。原作は浅田次郎氏、2001年から朝日新聞に連載され、2006年に映画化されました。
本作では、冒頭、百貨店勤務の椿山課長が虚血性心疾患で突然死するという設定なのです。まるで今回の西田さん本人の死を暗示していたとしか思えません。
物語は、突然死した椿山課長が、あの世に行くためのステップスペースに辿り着きますが、意に反してこんな所に突然来てしまって、まだやり残したことがありこのまま死ねないと騒ぎだします。
心残りがある人は、あるルールに則り、短期間ではあるが現世に戻れると聞き及んだ椿山課長は現世に戻ることを希望します。
ただし条件は、全くの別人として戻り、正体を知られてはいけないこと。霊界の案内人から滞在時間を表示するウォッチや霊界と交信する携帯電話などを渡され、椿山課長はヤクザの武田、小学生の雄一の三人で現界へ戻ることになります。
三人はそれぞれ、自分の接触したい人のもとへ、椿山課長は妻と小学生の息子(陽介)の様子を見に行きます。
ところが、そこで驚きの事実を目にしてしまいます。信頼していた部下の嶋田が、妻と親密な関係になっており、自分の息子だと思っていた陽介が、嶋田と妻の間の子だったことを知ってしまいます。
一方、ヤクザの武田は弟分の身を守り、また小学生の雄一は実の両親に会う望みを叶えることができたのです。
あの世に戻る時間が迫っていました。焦る椿山課長ですが、最終的には妻と嶋田の事情を理解し、陽介が嶋田を「お父さん」と呼んたことで、椿山課長は三人の幸せを見届け、あの世へ戻ることになります。泣かせられるシーンです。
愛する人の死は悲しいものですが、残された者たちは悲しみを乗り越え、幸せに生きようとする姿を示すことで、亡くなった人も安心して永眠できるということですね。本作は、そんな思いが込められた物語でした。
西田敏行さん、この物語のように、今は天国で安らかに愛する人たちを見守っているのでしょうか・・
「おんな太閤記」まとめ
はい、戦国時代を夫・秀吉と共に生き抜いた“ねね”の波乱万丈の物語でした。常に女・子供や民を慈しみ、また時代を冷静に見る目を持つ聡明な女性ねねに共感を覚えます。
夫の豊臣秀吉役を務めたのは西田敏行さん。コミカルかつシリアスに戦国のサクセスストーリーをはつらつと演じられていました。
西田さんの暖かいキャラクターは、これからも多くの作品の中で私たちの記憶に残り続け、その笑顔は私たちを癒し幸せを運んできてくれることでしょう。
謹んで、西田敏行さんのご冥福をお祈り申し上げます。
それでは、またお会いしましょう。Good Luck!