こんにちは、皆さん! 韓流時代劇「華政」は、朝鮮王朝第14代から17代までの歴史を背景に、王座を巡る攻防や陰謀、外敵圧力に苦悩する王、そして混迷の時代を生きた貞明公主の波乱の人生を描いた物語です。
明や後金といった勢力の影響や、宮廷での政治的な駆け引きが織り成す物語は、歴史時代劇ファンにはたまらない魅力となっています。
史実に沿ったストーリーをフィクションが彩り、ドラマの臨場感を一層高め、多くの視聴者を引き付けてやみません。
今回は「華政」の面白さや奥深さ、登場人物の魅力に迫り、朝鮮王朝混迷の時代を見聞しおさらいしてみたいと思います。
「華政」予備情報
「華政」(ファジョン)は、2015年、韓国MBCで放送された全65回のテレビドラマです。李氏朝鮮第14・15・16・17代に渡る王座の争奪戦や外敵に影響される混迷の時代を生きた、実在の王女・貞明(ジョンミョン)公主の波乱万丈の人生を描いた物語です。
【スタッフ】
監督:キム・サンホ(ファンタスティック・カップル)
脚本:キム・イヨン(イサン・トンイ・馬医)
【キャスト】
光海君(朝鮮15代王):チャ・スンウォン(最高の恋・シティホール)
貞明公主(ファイ)役:イ・ヨニ(復活・エデンの東・ミスコリア)
ホン校理 役:ソ・ガンジュン(グッドドクター・第3の魅力)
綾陽君(朝鮮16代王):キム・ジェウォン(ロマンス・私の心が聞こえる?)
イ・イヌ 役:ハン・ジュワン(朝鮮ガンマン・王家の家族たち)
「華政」ざっくりあらすじ
時は朝鮮王朝第14代王・宣祖の時代。光海君は世子でありながら、嫡子でないため長い間、宗主国の明に跡継ぎと認められず、父からも冷遇されていました。
そんな中、宣祖が崩御し、新たな王の座をめぐり朝廷は混乱しましたが、兄弟を守ることを条件に光海君は15代王に即位しました。
しかしその後、光海君の意図に反し、側近たちの思惑により仁穆大妃は幽閉され、子の永昌大君は殺害されてしまったのです。
ジョンミョン公主だけが宮殿から逃げ出すも、海賊に囚われ倭国の硫黄鉱山で奴隷として働かされることになってしまいます。ファイと名のり男装し過酷な日々を生き抜きます。
数年後、日本にやってきた朝鮮通信使に接触したファイは、朝廷の “火器都監” で働くホン・ジュオンと出会い、彼の手助けで祖国に戻ることができたのです。
◆ ◆ ◆
ファイは硫黄の知識を生かしホン校理と共に火器都監で働き始めます。
やがて、母である仁穆大妃に再会することが叶いますが、ジョンミョン公主であることが知られ王宮は大騒ぎ。
ジョンミョンは、母や弟を虐げた光海君にことごとく反発するため、王の側近たちは黙っていません。刺客や陰謀によりジョンミョンは度々命の危機に陥ります。
自国を守るため光海君が作り上げた火器都監でしたが、後金と明の戦いで、明から出兵するよう迫られ、火器都監も軍に同行することに。しかし、戦いは後金が圧勝、火器都監の職人とジョンミョンを守るために、必死で戦ったホン校理は捕虜にされてしまいます。
かねてから王座を狙っていた綾陽君(ヌンヤングン)はここぞとばかり敗戦の責任を追及し、民や士林を扇動し、反光海君の西人派と共にクーデターを起こし、ついに光海君は廃王となり流刑されてしまいます。
綾陽君が王となりましたが、間もなく反乱が勃発、王は宮廷と民を捨てて逃亡してしまいます。その後も、後金改め国号を変えた清が因縁をつけ攻め来ると逃亡を繰り返し、ために綾陽君は臣・民からすっかり信用を失い、軟弱な王と印象付けられてしまうのでした。
◆ ◆ ◆
ジョンミョンとホン校理の婚礼の日のことでした。謀反を企む重臣の陰謀により清が攻めよせてきました。またもや王は逃亡し、戦うも力の差は歴然、ついに清の皇帝に対し屈辱的な臣下の礼を取らされ、世子と次男を人質として差し出すことになるのでした。
二人は8年後、朝鮮へ戻ってくるのですが、清の西洋文化や思想に染まった世子は、仁祖に疎まれ、病を得て死んでしまいます。
それが毒殺と分かり、悪夢にうなされる綾陽君。継承者争いの陰謀で息子が殺められたのだと、ようやく自らの過ちを悟った王は、王族を貶めた側室や重臣たちを処罰し、次男のポンニム大君を17代王とし、最後の務めを果たし、疎遠になっていたジョンミョンに素直な気持ちを伝え、この世を去ってゆくのでした。
逃亡した重臣ジュソンの策略で、またもや清の攻撃が迫っていました。
朝鮮はこれを無事回避することができるのでしょうか?
ジョンミョンとホン校理、そして友のカン・イヌたちが命をかけて最後の知恵と力を絞ります。正義は、華政は花開くのでしょうか・・
「華政」見どころ・感じどころ
ドラマのラストで、貞明公主が新王に “華政” と書かれた意味深な書を贈ります。文字から察するに、臣民皆が豊かに幸せに暮らせるような輝かしい政治を目指してください、と伝えたかったのでしょうね。
◆歴史ストーリーとラブロマンス
嫡流の王女でありながら、王権争いに巻き込まれ過酷な運命に翻弄されたジョンミョン公主。しかし、男装までして生き延び、友やホン校理の助けを得て、元の公主の身分に戻ることができました。
苦労の末に磨かれた知恵や知識が彼女を更に強くし、王に対しても物申す信念の女性に成長してゆく姿は必見です。
中盤からは勇ましい姿とはうって変わり、公主としての気品と愛らしさがあふれる姿が描かれます。ホン校理と、彼の親友カン・イヌは、ジョンミョン公主を慕い一途に彼女を守ろうとしますが、公主は真面目でシャイなホン校理に惹かれています。次第に接近する二人のラブロマンスにも魅せられます。
◆オーラを放つ!登場人物の魅力
第14代王臨海君:演じたのはカリスマ的名優のチャ・スンウォンさん。強い独立国家を目指し、火器都監(ファギトガム)で火薬や武器の製造を進め独断専行の姿勢をとっていました。一方、冷酷非情な粛清に自ら苦悩し、臣民やジョンミョン公主への思いやりも見え隠れするという、多面性の顔を持つ難しい役所を繊細に演じ切りました。
第15代王綾陽君:演じたのはキム・ジェウォンさん。微笑の好青年というイメージを払拭し、今回は劣等感の塊のような卑屈な王という役に挑戦。クーデターで王座についた綾陽君でしたが、内乱や後金の侵略という苦難に見舞われ、偏屈な性格は更にエスカレート、情けない自分に対する怒りとも自責ともつかぬ揺れ動く心境を見事に演じました。
ホン・ジュオン:ヒロインの貞明公主の強さ・愛らしさはもちろんですが、夫となるホン校理の誠実さには心打たれるものがありました。貞明公主をじっと見つめる潤うような瞳が印象に残ります。史実でも結婚している二人、実際にはドラマのようなロマンスがあったかは分かりませんが・・
◆爆破シーンや江戸の町・多彩なロケ満載
火器都監という火薬を使った武器を扱う部署が重要な役割を担っているだけに、硫黄鉱山の噴火シーンや船着場の爆破シーンなど爆破シーンは迫力満点でした。
日本でも、京都や東京の撮影所でのロケが行われました。朝鮮通信使として江戸へやってきたホン・ジュオン役のソ・ガンジュンを始め、日本人役の俳優さんたちの和装は、それなりに?着こなしていましたが、日本語のセリフは、あらあらあら・・ちょっとずっこけてしまいます。
「華政」主要人物の魅力・史実とフィクション
主要な登場人物はほとんどが実在した人たちです。実際にはどんな人生を辿ったのでしょうか、ドラマと比較してみましょう。
第15代王・光海君(クァンへグン)
〈在位:1608年~1623年〉
第14代国王宣祖には正室の嫡子がおらず、側室・恭嬪金氏との間には、長男・臨海君と次男・光海君がおりました。臨海君は気性が荒く酒乱で問題を起こしてばかりいたため、やむなく次男の光海君が世子とされました。
しかし悲しいかな、光海君は嫡子でもなく、庶子でも長男でないため長らく宗主国の明から正式な跡継ぎとして認められることがありませんでした。それでも光海君は世子として、侵攻してきた日本軍と戦い、戦後は国内の復興に力を尽くしたのです。
宣祖の正室・懿仁王后亡き後、宣祖は継室に仁穆王后を迎え、待望の嫡子・永昌大君が産まれます。この後、朝廷では光海君の勢力(大北派)と永昌大君の勢力(小北派)との間で激しい派閥争いが起きます。
1608年、宣祖が亡くなり、実績や年齢において現実的な光海君が王に即位しました。側近たちは反対派の粛清を行い、永昌大君は忙殺、仁穆大妃や貞明公主も西宮に幽閉、光海君は心ならずもこれを黙認し王権の基盤を固めてゆきます。
この後、光海君は戦乱で疲弊した国の立て直しに尽力し、庶民のための数々の法改正や整備を行い、文化事業にも力を注ぎました。また、明の圧迫や日本の侵攻に対抗すべく、鉄砲など火薬武器を作るための火器都監という部署を設けました。
この頃、北方では後金(後の清)が勢力を拡大し明と戦争に突入していました。朝廷は明の求めに応じ、不本意ながら軍を出兵させますが大敗し、朝鮮軍は後金軍に降伏し捕虜となってしまいます。
しかし、光海君は外交政策において、日本や明国、後金との関係も重視し、中立外交政策に手腕を発揮します。
こうしてみると光海君には優れた指導力があったように思えます。治世15年という短い間ですが、国防を強化し、他国との外交もうまく調整し、内政では庶民の負担軽減策を実施、文化事業を行うなど荒廃した国土の復興に尽くしています。
しかし残念ながら、近親者を葬った暴君という事実が最後まで尾をひき、反発する勢力に足をすくわれてしまったのです。1623年3月、西人派勢力は光海君の甥の綾陽君を担いで政変を起こし、光海君は失脚、廃位され済州島に流罪となってしまいます。王宮を追われてから18年後、1641年、光海君は失意のうちに66歳で死去しました。
本作「華政」は、ほぼほぼ前述のような史実に沿った内容となっていました。ドラマでは情と立場の狭間で苦悩する光海君の姿が描かれましたが、実際でも遠からず、王とは孤高な存在で、孤独だったのかもしれませんね。
貞明公主(ジョンミョン公主)
貞明公主は、朝鮮第14代王・宣祖と仁穆(インモク)王后との間に生まれた嫡流の王女で、弟は永昌大君(ヨンチャンテグン)、第15代王・光海君とは異母兄妹になります。
幼いうちは光海君に可愛がられましたが、権力の座を手にした光海君により、永昌大君は死に追いやられ、仁穆王后と貞明公主は西宮に幽閉されてしまいます。しかし、かろうじて生き延び、1623年3月、綾陽君(ヌンヤングン)を担ぎ上げた西人派のクーデターで光海君が失脚したことでやっと解放されます。
綾陽君が王に即位した当初は仁穆大妃や貞明公主を厚遇し多くの土地や家が与えられましたが、仁穆大妃が亡くなると貞明公主との関係は悪化してゆきます。
綾陽君が自分本位の行動で民衆から愚王と思われている一方、貞明公主は情に厚く、持てる資産を民衆のために役立て尊敬されていたと伝えられている所以かもしれません。
貞明公主は82歳という長寿を全うしています。
ドラマでは貞明公主が日本に渡って来ていたり、火器都監で火薬作りの仕事をしていますが、この過程はフィクションです。
★オープニングのタイトルに使われた“華政”という文字は、美術館所蔵の貞明公主直筆の書が用いられました。達筆だったのですね・・
ホン校理/洪柱元(ホン・ジュオン)
ドラマではソ・ガンジュン演じるホン校理役で登場し、貞明公主と愛し合い結婚することになるホン・ジュオンですが、この方も実在の人物 “洪柱元” がモデルとされています。洪柱元は貞明公主より3歳年下で1623年クーデター後に結婚し、7男1女と子に恵まれました。
ドラマでは初々しいロマンスが描かれますが、実際には恋愛結婚だったのかは分かりません。
第16代王・仁祖(綾陽君/ヌンヤングン)
〈在位:1623年~1649年〉
綾陽君には綾昌君という弟がいましたが、非常に優秀なため光海君に警戒され、反徒として死罪にされたことで綾陽君は光海君に恨みを抱いていました。
1623年、綾陽君は西人派と共にクーデターを成功させ光海君を廃位、16代王・仁祖(インジョ)として即位します。しかし、彼は光海君のような強い政治力・統率力を持ち合わせていなかったようで、在位中は苦難の連続でした。
仁祖が即位してすぐに内乱が勃発、民衆を見捨てて王宮から逃れることになってしまいます。内乱は治まったものの、今度は外圧に悩まされます。
光海君の中立外交に対し、新朝廷は親明派で占められ、益々勢力を増す後金には無策でした。朝廷には先見の明を読む人材がいなかったのですね。
4年後の1627年、侵略の機会を狙っていた後金が朝鮮に侵攻してきます。この時も仁祖は王宮を捨て江華島に避難し、とりあえずは講和に至ります。
しかし、1636年、明を下した後金は国号を「清」と変え、新たに貢物と君臣関係を要求してきました。朝鮮の朝廷がこれを拒否すると、清は10万の兵力で疾風の如く侵攻、朝鮮軍は逃げ場を失い南漢山城に籠城しますが、力の差は歴然、結局は敗北に至ります。
仁祖は、三田渡(サンジョンド)で、清の皇帝に対し “三跪九叩頭” をもって臣下の礼とする屈辱的な降伏儀式を強いられます。更に、長男・昭顕世子(ソヒョンセジャ)と次男・鳳林(ポンニム)大君の兄弟を人質として差し出し、50万とも言われる朝鮮人捕虜が連行されました。
三度に渡り皇宮や民を捨て逃れた王・仁祖への尊敬や信頼は薄れ、王自身も情けないと自責の念を抱いていたはずです。
それから8年後、人質の息子二人は解放され戻ってきたのですが、長男・昭顕世子は清の進んだ文化に接し、親清的な考えを持ち込んだため、仁祖は彼を次第に疎むようになります。
なぜなら、清は自分に数々の屈辱を強いた苦しみの元凶、憎き生涯の敵であるからです。反乱や侵略の体験は仁祖のトラウマ、清に好意的な長男に憤りを覚えたのです。
そうした中、昭顕世子の病死(毒殺説の可能性も)により、仁祖は次男の鳳林大君(後の第17代王・孝宗)を世子とします。
そして昭顕世子の支持勢力を一掃、昭顕世子の長男と次男は流刑地で処刑、世子嬪も賜薬で自決させてしまいます。後々の謀反を恐れるが故の苦渋の選択だったのでしょう。
王座を得てからの仁祖の生涯は苦難の道のりでした。ドラマも史実に沿って演出され、屈辱と悲嘆にくれる王・仁祖の精神的な側面がリアルに描かれました。実際の王もこうした感情に苛まれていたのかもしれません。
女官キム・ゲシ
幼い頃から王宮に入り光海君の下で働いていました。聡明な彼女は第14代王・宣祖(ソンジョ)に気に入られ王に仕えるようになりましたが、宣祖が世を去る前後には自分の地位を守るため光海君を支持し、光海君が王になった後は王の側近くの女官として大いに権力を奮うようになります。しかし、仁祖反正のクーデターにより失脚、処刑されてしまいます。
ドラマでも、ほぼ史実に沿った内容となっています。
重臣キム・ジャジョム
キム・ジャジョムは朝廷の重臣で、仁祖反正クーデターにおいては綾陽君を指示し重要な役割を担いました。その後は王の信頼を得て高位に就きましたが、仁祖亡き後は失脚し流刑となります。
ドラマでは、かなりの策謀家として描かれましたが、史実でも非常に影響力のある人物とされています。
側室チョ・ヨジョン
チョ・ヨジョンは仁祖の側室で史書には「貴人・趙氏」とあります。彼女は王女・王子を産みますが横暴な性格で、邪魔者を排斥すべく数々の陰謀を企んだ悪女として知られています。仁祖亡き後は、彼女を罰するよう奏上が殺到し、ついに処刑されてしまいす。ドラマでも、ほぼ史実に沿った内容となっています。
◆◆◆フィクションキャラクター◆◆◆
ホン校理の親友カン・イヌと、その父親で最後まで生き延び朝廷を撹乱する悪役カン・ジュソンは、本作中でかなり重要な人物ですが、こちらは物語を彩る架空の人物のようです。
「華政」まとめ
はい、波乱万丈の人生を歩んだ15代王光海君と16代王綾陽君、そして貞明公主の生涯を描いたスペクタクルストーリーでした! まずまず史実に沿った物語ですが、貞明公主がクーデターを逃れ、倭国の硫黄鉱山に売られ、祖国に戻った後は火器都監の職人ととして働くなどは大胆なフィクションでビックリです。が、見応えのあるドラマなのでぜひお勧めです!
終盤、貞明公主のセリフに現代にも通じる印象深い言葉がありましたので記しておきます。
「この世は華麗な虚構にすぎない。昨日の不義が続くなら今日も戦う。今日の不義が明日も続くなら再び戦えばいい。私にとって希望とは、いつか訪れる平和ではない、今日私と共に戦い、明日も共に戦う人々の存在そのものなのだ」
「権力者は当初の志をいずれ忘れてしまう。民のための権力などこの世にない。権力とは初めからそういうものだ」
政治家の方々のお耳に入ったら何と思われるでしょうか?
★それでは、またお会いしましょう。Good Luck!